「高級ワイン市況」ブランドとバリューとポテンシャル

 

 

中華系が主導した2011年6月のボルドーワイン・バブルのピークから6年経過。

2014年7月に底入れしたとみられるボルドーワインをメインとする高級ワイン市場は、再び上昇傾向にある。ワイン価格を上昇させた一因の背景には、英ポンド安や人民元安によるマクロ経済からの影響がある。

そんな金融市場の混乱は、ワインの収集や投資にどう影響を与えるのか?

また、高級ワインの業者間取引サイトであるLiv-exでは、いったい何が起きているのか?

そして、ワイン価格はこの先値上がりするのか?

・・・・・・・・等々、そんな高級ワイン取引の状況を、酒屋のオヤジなりに推察します。

 

 

 

 

 

 

 

 

【ワイン・インデックス2012年5月から2017年5月末までの推移】

高級ワインの業者間取引サイトである Liv-ex の指数「Liv-ex Fine Wine 100」は、前月末から0.4%の小幅な上昇。前月の小幅な下落から値を戻した。

4月から5月にかけてもっとも値上がり率の大きかった銘柄は、ボルドー、サン・ジュリアンの「Ch・レオヴィル・ラス・カーズ2010」で9.4%上昇して1ケースは£1,800。続いてボルドー、ペッサック・レオニャンの「Ch・ミッション・オー・ブリオン2012」で9.1%上昇して1ケースは£1,736。

3番目に値上がり率の大きかったのがカリフォルニアのカルトワインとして有名な「スクリーミング・イーグル2012(WA100)」で5.5%上昇して1ケースは£23,800。

「Ch・マルゴー2009」4.9%1ケース£6,610、「DRC ラ・ターシュ2011」3.9%1ケース£21852と続く。

「レオヴィル・ラス・カーズ」と「DRCラ・ターシュ」はともに4月に値下がりして5月に値を戻した。

一方もっとも値下がり率の大きかった銘柄はローヌの「ポール・シャブレ・エネ エルミタージュ・シャペル2012」で6.2%下落して1ケースは£917。続いてシャンパーニュの「ドン・ペリニョン2002」で5.1%下落して1ケースは£1262。

「ポール・シャブレ・エネ エルミタージュ・シャペル2012」は3月に上昇したが、5月の下落で上昇前の価格水準に戻った。

2017年ヴィンテージの霜被害はボルドーの右岸と内陸部でより深刻な状況。ボルドーのトップブランドの多くを生み出す左岸ジロンド川沿いのサン・テステフ、ポイヤック、サン・ジュリアンの被害は少ないとのこと。

そのためか2016年ヴィンテージのアン・プリムールでは、被害の大きい地域のシャトーほどリリース価格が2015年ヴィンテージに比べ上昇している印象をうける。

 

非常に高い評価を受けるボルドーを代表するワインのひとつである「Ch・ムートン・ロートシルト」の2016年ヴィンテージのアン・プリムールは、ネゴシアン出しのユーロ建てで2015年のアン・プリムールから9.4%価格が高い。英ポンド建てでは24.6%高い水準になる。1ケースは£5,184。

これは同じように評価の高い2010年ヴィンテージの現在価格よりも約10%安い価格水準であり、またLiv-exが提案する指標である「フェアーバリュー」からも10%ほど低い価格水準。

現在価格で12%ほど安い2015年ヴィンテージが買われやすい状況にあるようだ。

 

もしワインがビットコインと同じような背景で買われているとしたら、それは恐ろしいことなのかも知れない。飲むためではなく、そのほとんどがさらに高い価格で転売するために買われているとすれば、それは投機的市場と言える。

Liv-exの保管倉庫のワイン量は120,000ケースに達した。これを横に並べると39Km。また積み上げれば23Kmになるとのことで、これはエベレストの高さの2倍以上になるのだそうだ。

これだけの量が転売を狙っているとすれば、それは投機が過熱化しているということなのかも知れない。また上値が重くなってきているとも想像できる。

 

近年のトップブランドのワイン価格は驚くほど高い。しかし、同じような品質の評価をうけるワインでもブランドによっては割安感のあるものもある。

たとえば日本のサントリーが所有し、積極的な投資で品質を向上させていると聞くサン・ジュリアンの各付けワインである「Ch・ラグランジュ」だ。

2016年ヴィンテージ アン・プリムールのリリース価格はユーロ建てで20.8%上昇し、英ポンド建てで40%上昇したが、それでも1ケースは£420。

特に熟成してその真価を発揮できるようにデザインされたワインであり、熟成して評価の上方修正があるとすれば、かなりのお得感があるように思う。

危険な香り漂うワイン市場だが、ブランド、バリュー、ポテンシャルを吟味すれば、まだまだ魅力的なワインは存在するということではないか。それこそが目利きではないかと思う。

 

 

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